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キーワードは船の復原力”。

呼吸量の僅かな変化によって現れる呼吸泳動(マーメイドダンス)の謎が解けるだろうか?

呼吸泳動の謎を探る - 1

呼吸から呼吸泳動が なぜ発生するか・・?

発見

仮説

息を吸うと肺(肋骨)が膨らみ、息を吐くと肺が縮みます。
水の上で、呼気または吸気運動を強調して行うと、上体が揺れ始め、やがてダイナミッな全身運動(=呼吸泳動)が発生するという不思議な現象に出合いました
「呼吸運動から、なぜダイナミックな全身運動が発生するのか?」
この全身運動を呼吸泳動と名付け、呼吸泳動の謎を探ってみました。その過程で、思いがけなく見えてきた生物の巧妙な呼吸のカラクリ
吸気と呼気を繰りかえす呼吸運動には、パチニ小体という神経細胞が重要な役目を担っていることが想像されました。

呼吸運動については、次のように説明されています。

 

呼吸運動は、空気を肺に取り込む吸気運動と空気を排出する呼気運動とに分かれ、主に肋骨筋、横隔膜、腹壁筋によって行われます。

吸気運動では、横隔膜が下がり、外肋間筋が収縮して胸郭内が広がることによって肺が拡張し、空気が肺内に流入します。
呼気運動では、内肋間筋が収縮し、腹壁筋の収縮によって横隔膜が挙上して胸郭が小さくなり、肺が収縮して空気が排出されます。

呼吸運動の中枢は延髄にあり、呼気ニューロンや吸気ニューロンからのシグナルが延髄に送られています。

メニュー

呼吸とは
誘導法

呼吸とは

呼吸泳動の誘導法

A 吸気運動を強調操作すると呼吸泳動が現れやすい

1  水の中で呼吸運動を行います。(正座して行うと、バランスの変化が分かりやすい)

2 左右の肋骨に手を当て、呼気時の肋骨の膨らみに合わせて、手の力をゆるめます。

3 吸気時には肋骨が収縮しますが、手はゆるめた位置を保持し、肋骨の収縮に追従しない。

4 次の吸気時で、肋骨が再び膨らむのに合わせて、更に手の力をゆるめます。

5 3と4の動作を、数回繰り返しておこなうと、

6 上体が前後左右に揺れ始め、呼吸泳動が始まります。 

B 呼気運動を強調操作すると呼吸泳動が現れる

呼気時の肋骨の収縮に手の力を合わせ、1〜6の​逆の操作を行います。

​水の中で呼吸運動を強調すると現れる自動運動を「呼吸泳動」とネーミングしました。​

​吸気運動または呼気運動のうち、どちらか一方の運動を強調する操作を行います。​

2 呼吸泳動の謎を探る

呼吸泳動は、最初に、体が前後に傾き始めます。

実験をしてみると、被験者の体軸が前傾しているか、後傾しているかの違いや、吸気運動を強調するか、呼気運動を強調するかの違いによって、最初に現れる泳動が前傾か後傾かに分かれる傾向があります。

なお、

​被験者の体軸に左右の傾きがある場合は、前後運動にプラスして、傾きによる泳動が加わり、呼吸泳動は回転運動(角運動)へと変化します。

疑問 なぜ呼吸泳動

疑問・・僅かな呼吸量の増減で、なぜ呼吸泳動が発生するか?

初めて呼吸泳動という事象に遭遇したとき、私は目を丸くして驚きました。

息を吸えば肺が膨らみます。空気量が増えた分だけ浮力が生じます。しかしそんな僅かな空気量の増減で、静止していた自分の体がひとりでに動き出すという現象は、信じ難いものでした。

船の復原力

呼吸泳動の謎を、船の復原力(浮心の移動)から考えてみた

陸上に住む私たちは、動かずに二本の足で直立できることを、当然のことのように思っています。

少々の風が吹いても、びくともせずに立っていられます。

しかし水の中ではどうでしょう。頭を水面から出した状態で水の中で直立してみると、どことなく体の不安定さを感じます。水の流れが少々変化するだけで、体は揺らつくでしょう。この不安定漢は、体が水の浮力を受けるため、垂直方向に体の重心軸を保治続けることが難しいからです。

呼吸泳動の謎を探る過程で、私の目に止まったのは「船の復原力」という言葉でした。

船は、船体の上半分は水の上、下半分は水の中にあります。船が海中に沈まず浮いていられるのは、船体が傾くと浮心の位置が移動し、それに伴い船を直立状態に戻そうとする力=復原力が働くからです。

私たちの体は、体積の7~80%が水中にあると、水の浮力を受けて体軸は不安定になります。

その状況で肺に空気が多く入ると、浮心の位置が移動してさらに体軸は不安定になり、傾きやすくなります。「呼吸泳動」の初期の動きは、傾きを元に戻そうとする復原力の作用と見ることが出来るでしょう。また、体軸の傾きがさらに大きくなると、もはや復原力では間に合わず「乱泳動」となります。暴風雨にさらされた船の動きの如しです。

呼吸泳動という現象を力学的に説明するならば、船の復原力は有力な説明になるという予感がしました。

水中泳動は、頭は水の上、体は水の中という状況の中で発生します。

私は、呼吸泳動の現象を、船の復原力になぞらえて考えてみました。

体内の吸気量が増えると、体の浮心の位置が変化するので、体軸は傾きます。しかしその時、復原力が働いて、体軸は元の位置に戻ろうとします。その繰り返しが、前後に動く呼吸泳動の動きではないかと考えたのでした。

意識の問題:日常の運動と呼吸泳動の違い

日常問式の違い

大きく息を吸ったり吐いたりすると、体内の空気量が増減するので、浮心が移動します。浮心の位置が変化すれば、力学上では僅かに体軸が傾きます。

日常では、体のバランスが崩れそうになると、脳から体軸を補正するコントロール作用=筋力が働いて、傾きは修正されます。

しかし、脳の随意運動が抑止されている条件下(水中泳動・マーメイドダンス)では、体軸が傾く運動(=角運動、モーメント)が修正されずに運動が続き、さらに傾いていきます。その結果、傾きにそった姿形(動き)がむき出しになり、呼吸泳動のような動きが現れると考えられます。

人の肺と浮き袋

魚は 浮きぶくろ(浮心)をうまく操作して泳いでいる

魚は、浮袋を上手く利用して、水中を泳いでいるということです。

魚は海水より重いので、魚体は沈むはずですが、鰾(うきぶくろ)を持っているために海中に浮かぶことができます。魚は鰾内のガスの増減によって浮力の方向性を調整し、海中を上下左右に泳いでいると言われています。

四肢動物は鰾のかわりに肺をもっています。人間の肺は、硬骨魚の鰾(ひょう うきぶくろ)に相同するそうです。肺の中に空気を多く入れると、浮力が増し浮心が移動します。

しかしながら陸上では重力の力が大きいので、健康な人の場合は、僅かな呼吸量に変化によって体が傾くという影響はほとんどありません。しかし体のバランス感覚が非常に弱っている場合や、水の浮力を受けている場合は、肺の中の空気の量の変化は、体軸の動きに影響が出ることが予想されます。

【注】クジラは肺魚ではないので、四肢動物の肺とは異なるメカニズムの鰾(ひょう うきぶくろ)で呼吸をしています。詳しくはウィキペディアをご参照下さい。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B0%BE

結論・呼吸泳動

呼吸泳動の謎 ( 結論として)

大きく息を吸ったり吐いたりすると、呼吸泳動が現れる現象の謎。

この謎は、力学的には次のような経緯で発生すると、私は解釈しました。

​1 私たちの体は、呼吸量の変化で浮心 の位置が移動します。

2 浮心が移動すると、それに伴って体の中心軸(体軸)が傾きます。

3 日常では、体軸が傾くとそれを補正するバランス意識が働き、体軸の傾きは自然に補正されています。

4 しかし無意識領域(意識が働かない場合)では、バランス意識が働かないので、体(物体)は浮心の変化に添って動き、体軸が傾きます。

5 体軸が傾くと、体に復原力(体軸と重心軸の葛藤、直立状態に戻ろうとする力)が働きます。

6 呼吸泳動の初期に見られる揺れの動きは、重心を復元しようとする動きであろうと考えられます。

7 重心の復元ができずバランスが乱れると、呼吸泳動は乱泳動へ移行し、体はめちゃくちゃな動きを呈することになります。

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呼吸泳動の謎を探る過程で、キーポイントになったのは「船の復原力」でした。

船は、船体の上半分は水の上、下半分は水の中にあります。

船が海中に沈まず浮いていられるのは、船体が傾くと浮心の位置が移動し、それに伴い船を直立状態に戻そうとする力=復原力が働くからです。

私たちの体は、水中にあると水の浮力を受けて体軸は不安定になります。陸上で歩くよりも、水中ウォーキングの方がふらつきやすいのも、水の浮力のためです。

その状況で肺に空気が多く入ると、浮力が増し、浮心の位置も移動するので、さらに体軸は不安定になり、傾きやすくなります。

「呼吸泳動」の初期の動きは、傾きを元に戻そうとする復原力の作用と見ることが出来るでしょう。

また、体軸の傾きがさらに大きくなると、もはや復原力では間に合わず「乱泳動」となります。

暴風雨にさらされた船の動きの如しです。

呼吸泳動という現象を力学的に説明するとならば、船の復原力は有力なキーワードになるでしょう。

 

 

この呼吸泳動という現象から、私は、逆に、

「私たちの体は、体軸を垂直に保とうとする意識の力(筋力)が自然に働いているからこそ、ふらつかずに立っていられる」ことに気がつきました。

特別に意識している感覚はないのに、私たちがフラつかずに立っていられる体の仕組みに、私はあらためて敬意を表したいです。

次のテーマ:パチニ小体=全身に点在する 圧電神経)に注目する

しかしながら、復原力という力学的な説明で呼吸泳動の謎が解けたとするには、不満が残ります。

この謎を、生理学上ではどのように説明できるのでしょう。

さらに謎を追っていくと、パチニ小体という神経細胞に出合いました。

パチニ小体を追っていくと、その先に、呼吸運動の知られざるメカニズムがあることに気づきました。

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