”人体の動的遺伝” に気づく ホームページ
"マーメイド ダイナミクス ( 水中泳動 )
( 体内で秘かに働いている自動運動システム )
謎の先に、
呼気と吸気の情報を切り換えているパチニ小体(圧電センサー)の活動が見えてきた!
パチニ小体メニュー
呼吸泳動の謎を探る - 2
呼吸の切り換えに、バチニ小体が関与か・・?
発見
仮説
呼吸泳動の謎解きを”船の復原力”をキーワードに考えてきましたが、これで解決とするには不満が残ります。
呼吸泳動の先に、何か謎があるのではないか?
ある時、解剖学書をめくっていると、ファーターパチニ層板小体という知覚神経に目が留まりました。この知覚細胞は 体内に点在する圧受容器で、触覚神経の仲間です。
ファーターパチニ層板小体という知覚神経は 体内の力の変化(圧力の変化)をセンサーする圧受容器(別名=圧電神経)で、触覚神経の仲間です。
私たちは、触覚神経(マイスナー触覚小体)が皮膚の下にあることはよく知っています。特に指先には触覚神経がびっしり存在していて、様々な種類の知覚を識別し、巧妙に動くことが出来ます。
パチニ小体は触覚小体のようなポピュラーな知覚神経ではありません。しかし調べてみると、パチニ小体は皮膚の下だけでなく、粘膜、内奥の被膜、関節包、動脈の外膜や吻合部などにも配置されており、注目すべき知覚神経終末であることに気づきました。
つまりパチニ小体は、その配置部位における多様な圧変化を感受し、中枢に伝えている圧電神経であることが想像されました。
パチニ小体(=全身に点在する 圧受容器)に注目した!
左は、パチニ小体とマイスナー触覚小体の組織図です。
どちらも体内に点在する知覚神経・被包終末器官ですが、二つの形態を比較して見てみると、それぞれがセンサーする対象が異なることが想像されます。
皆さんはどのように想像されるでしょう。
パチニ小体のどこに興味を持ったか?
1パチニ小体は 敏感な圧受容器
= 圧電神経(=圧力を受けると電気信号を発信する)
パチニ小体を調べて分かったことは,体には圧力の変化を知覚して発信する圧力受容器の神経組織があることでした。
パチニ小体は、いわば玉ねぎのように、幾層もの皮をかぶった被包型の層板圧受容器です。
その仲間(移行型)には、マイスナー触覚小体、ルフィニ終末神経、クラウゼ終末神経など様々な圧受容器があり、それぞれが、体内でそれぞれ特定の圧変化に対応して、神経インパルスを発信しています。
圧受容器は、別名「圧電神経」とも呼ばれています。
私はパチニ小体に大いなる興味を持ちました。
「もしかしたら、パチニ小体は呼吸圧の変化を知覚している圧受容器かもしれない。
呼吸泳動と関係のある神経細胞かもしれない。もっと調べてみよう・・」
そう考えて、調査を進めました。
2パチニ小体の形はユニーク・・玉ねぎ状(層構造)のラグビーボール
パチニ小体はユニークな形をしています。卵型で、中味は膜が同心円状に幾重にも重なったタマネギ様の層状構造になっています。そしてその隙間は、液体で満たされています。
私はこのパチニ小体の形を眺めて、クッション性の高いしなやかで強靱なラグビーボールをイメージしました。形から想像して、一方向からの圧力だけでなく、あらゆる方向からの圧力に対応して、インパルスを発生する造形という印象を受けました。
パチニ小体は直径4㎜以上という比較的大きなものから小さな形のものもあり、隙間は液体で満たされています。
この造形からは、大小さまざまな圧力や、方向性の異なる力に対応して神経インパルスを発している、弾性豊かな造形であることが想像されます。
3パチニ小体の配置部位・・胸膜、横隔膜、関節の周囲、腸間膜、血管膜、他
パチニ小体は、関節の周囲、骨膜、腱、筋膜、胸膜、横隔膜、腸間膜そして動脈と静脈の吻合部(境目)に配置されています。
私はまず、胸膜や横隔膜にパチニ小体が配置されていることに注目しました。そして胸膜や横隔膜に配置されているパチニ小体は、呼吸運動で肋骨が動くときに、その圧力変化を電気信号(神経インパルス)に変換して中枢に発信している様子を想像しました。
パチニ小体は皮膚の下、胸膜、横隔膜、関節の周囲、骨膜、腱、筋膜にも配置され、それぞれでの圧変化にインパルスを発信しています。
また、動脈の外膜や、動静脈の吻合部にパチニ小体が配置されていることに注目すると、パチニ小体は血流という微小な圧変化にも関与していることが推測されます。
私たちの体は、「運動をする(関節を動かす)と、呼吸運動が大きくなり、脈が速くなる」という一連の因果関係を示します。運動・呼吸・血流という、この一連の流れの中に、関節、胸膜、血管に配置されているパチニ小体が、ネットワークとして介在している可能性はないだろうか?
私はそのような考えを巡らせながら、さらにパチニ小体について調べを進めました。
4パチニ小体は加圧や減圧で変形する度に 発信する仕組み をもっている
パチニ小体の加圧発信、減圧発信の様子を想像してみた
パチニ小体で注目すべきは「加圧発信・減圧発信」という神経機能です。
パチニ小体のインパルス発信のシステムは「変形時に発信するシステム」になっています。小体の形が変形すると、中心にある神経線維が興奮し、インパルスを発信するという仕組みです。
従って、
周囲から圧力を受けて、小体の形が変形する時、インパルスを発信する。
周囲からの圧力が減り、小体が元の形に戻る(変形する)時、インパルスを発信する。
周囲が同じ圧力の場合、小体の形は変化しない為、インパルスは発信されない。
〜〜例えば、強い圧力が持続すると、小体はインパルスを発信しなくなります。
言い方を変えると、
パチニ小体は、求心性の圧力にも、遠心性の圧力にも興奮し、
インパルスを発信するという機能構造を持っていることが分かりました。
左図はパチニ小体の加圧発信・減圧発信のイメージ図です。
パチニ小体は、押圧されて形が変形すると、中央の軸索が刺激を受けてインパルスを発信する。また、圧力が弱まって隙間ができると、パチニ小体は膨らむ方向に変形し(=元の形に戻る)、その時中央の軸索からインパルスが発信される。
左は、パチニ小体が、可逆的な圧力変化(求心性と遠心性)にそれぞれ対応している仕組みをイメージ化した図です。
5パチニ小体は、振動受容器でもある(微かな振動にも反応する)
パチニ小体は圧力だけでなく、ごく微かな振動にも興奮して神経インパルスを発射することも、研究者によって確認されています。
例えば、研究者が実験している最中に、傍を通る人がいると、その人が起こした床の振動をパチニ小体は感受して、神経インパルスを発射するということが認められています。
このことは、パチニ小体が非常に感度のいい振動受容器でもあることを証明しています。
私たちは、大気の変化や気温・湿度の変化を体で感じています。中でも体に痛みのある人、体調がすぐれない人は、気圧の変化で症状が憎悪するという現象に、私は関心を持っていました。
「雨が降る前日に、体調が悪くなる。痛みがでる」
「台風が日本に近づく前頃に、体調が悪くなる。痛みが強くなる」
このような過敏症状は、人間の体に、大気圧の変化や温度・湿度の変化に対応してインパルスを発生する神経終末の組織があることを示す症状と思われます。
圧受容器について調べを進めていると、様々な圧受容器が、その配置場所において、大小様々な圧力の変化を感受し、その都度、中枢に向かって発信しているネットワークがあることが推測されました。
「私たちの体には、形の違う多様な圧受容器が身体中に配置され、多様な外力や気圧や力の変化に対応できる組織網が張り巡らされている」ことが想像され、
私たちの体のシステムを、電子機器的な視点で検討することも必要であろうと考えるようになりました。
呼吸運動(吸気・呼気)が 自動的に切り換わる仕組みについて
パチニ小体は 吸気と呼気の圧力変化に対応して、吸気情報と呼気情報を切り換えて発信する仕組みをもっている。
脳はこの情報に基づき、吸気運動と呼気運動を区別して発令している。
私は、胸膜にあるパチニ小体を想像して、
「加圧による発信・減圧による発信」を考えてみました。
私たちの肺は、胸壁内側を覆う壁側胸膜と肺を包む肺胸膜という2つの膜で覆われています。
そして両膜の間は陰圧(外気圧より低い)になっています。
仮にパチニ小体が肺胸膜と壁側胸膜の間に配置されていると仮定しましょう。
パチニ小体は、吸気時には二つの膜に押圧されて神経インパルスを発信します(=求心性の圧による発信)。
呼気時には、両膜間が開いて陰圧になるので、元の形に戻りながら(=膨らむ)神経インパルスを発信します(=遠心性の圧による発信)。
つまり、二つの膜の間にあるパチニ小体は、求心性の圧による吸気時発信と、遠心性の厚による呼気時発信を交互に切り替え、脳に向けて発信していることが推測されます。
呼吸運動は、自動的に繰り返し行われ、死ぬまで続きます。その恒常性のカラクリ。
そのカラクリは、パチニ小体が吸気と呼気で、発信を切り替えるという巧妙な仕組みを持っていることにあるのではないでしょうか。
左図は、壁側胸膜と肺胸膜の2つの膜の間にパチニ小体が配置されていると仮定し、パチニ小体の発信の様子を想像した図です。
パチニ小体の中心にある神経線維が、求心性、遠心性の二種類の圧変化に対し、インパルスをスイッチングして発信しているイメージを図にしました。
脳においては、パチニ小体が発する二つの異なる可逆的情報基づいたフィードバック機能を経由して、緊張と弛緩という2種類の筋肉活動が発現されるシステムがあると推測されます。
<上の図の説明>
・吸気で胸膜が広る →→ パチニ小体は胸膜によって求心性の圧変化を受け、発信する。
・呼気で胸膜が縮む→→ パチニ小体は胸膜によって遠心性の圧変化を受け、発信する。
・息を止め、胸膜に変化がないとき →→ パチニ小体の形は変形せず、発信はない。
という仕組みになっていることが想像されます。
パチニ小体の発信情報が 吸気時と呼気時で変化する理由は、
圧変化による電位差で発生する電流変化と考えれば、納得できる。
左図はスポイトで水を出し入れする時の図です。スポイトから吸入される水の流れと、排出される水の流れは逆の方向です。水の動きを矢印で示すとしたら、矢印は逆方向を示すでしょう。
パチニ小体が発信する信号は、電位差による信号で、脳とつながる神経線維の中を信号が行ったり来たりしているのではないか?という想像を図にしました。
この発信の仕組みは、トランジスタ(デジタル回路)を流れる電流の仕組みを参考にして考えてみてはどうでしょうか。
私は、ここで、疑問に思うことがありました。
「パチニ小体は、吸気時も呼気時も、同一の信号を発信しているのだろうか?」
という素朴な疑問です。
例えば、ハーモニカを演奏する時、息を吐く時と、息を吸う時とでは異なる音が出ます。
あるいは、スポイトで水を吸入する時と、スポイトを押して水を排出する時とでは、水は逆方向に進みます。逆方向す進む水の流れの情報は、同一情報ではありません。
私たちの脳には、終末神経からの個々の情報に応じて、異なる回路が作動するフィードバック機構があると考えられています。
スポイトとパチニ小体を同じ目線で考えるのは、かなり乱暴ではありますが、
もしパチニ小体が、吸気時と呼気時で全く同一のインパルス情報を発信しているとすれば、脳は吸気と呼気を区別することができないでしょう。脳は吸気も呼気も同一の情報として認識し、同一のフィードバックの回路を経由することでしょう。
その結果現れる運動は同一の筋肉運動であって、呼気運動(収縮)または吸気運動(弛緩、伸張)のどちらか一方になると考えられます。脳は、異なる2種類の信号に対応する、相反する2種類の筋肉運動(=緊張と弛緩)を発現するシステムを持っているのではないでしょうか?
私の素朴な感想ですが、呼気運動と吸気運動が自動的に繰り返される呼吸運動のカラクリには、パチニ小体の介在によるものであろうと私は考えています。
私は電磁気の知識が乏しいため、この仮説については、関係者のご意見を賜りたいと考えています。
下図は、呼吸運動が自動的に繰り返される恒常性のシステムの仮想図です。
母親の胎内から生れ出た赤ちゃんの肺は、陸上の大気圧を受けて収縮し、
「オギャー!」という呼気の声を出しながら収縮します。これが呼気運動。
1 呼気運動時には、胸膜間が陰圧になるのでパチニ小体は膨らみ、膨張によるインパルスが脳に向けて発信されます。
2 脳では、呼気発信に対応するフィードバック回路が開通され、弛緩(伸張)の筋肉運動(=吸気運動)が発現されます。
3 吸気運動が始まると胸膜間が狭まり、パチニ小体は加圧をうけて収縮し、収縮、変形によるインパルスが脳に向けて発信されます。
4 脳では、吸気発信に対応するフィードバック回路が開門し、収縮の筋肉運動(=呼気運動)が発現されます。
母親の胎内から生まれ出た途端に始まり、死ぬまで続けられる呼吸運動の恒常性は、1〜4がループとなって繰り返されるシステムによって支えられていると考えます。
尚、私は科学の門外漢ですが、パチニ小体のインパルスや脳の神経回路を通る電気の流れは、電位差によって生じるものではないかと仮想しています。
科学の世界では、圧力を加えると、圧力に比例して電荷が現れる(=圧電気、ピエゾ電気)物質があり、それらを圧電体と呼んています。圧電体には水晶のような天然素材や、人セラミックス、高分子素子など多様な素材があり、さまざまな電子機器に利用されています。
パチニ小体はまさに生きた圧電体と言えるのではないでしょうか。
私たちの体には、パチニ小体以外にも様々な圧電受容器があり、それらは個々に圧力対応の発信をしています。パチニ小体の仕組みや役目を知ることによって、私たちは体に張り巡らされた圧電受容器の全体像に気づくことになるでしょう。
圧電体については、次のサイトが参考になりました。
・ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/圧電効果
https://ja.wikipedia.org/wiki/圧電素子
・デジタル電気はどっち向き? http://d.hatena.ne.jp/rikunora/20080627/p1
・電子部品の働き http://www.murata.com/ja-jp/campaign/ads/japan/elekids/compo
・誘電体のはなし1,2 http://hr-inoue.net/zscience/topics/dielectric1/dielectric1.html
横浜で行われた先端科学技術の展示会場を訪問した時のことです。
ある展示ブースに MEMS圧電デバイスを紹介するパネルが掲げられていました。
それを見た途端、
「あ、このマイクロマシンのメカニズムは、パチニ小体にそっくりだ!」
と感じ、エキサイティングしました。
パネルにはどんな図が掲げられていたかというと、下図のようなものでした。
上の圧電デバイスの原理と下のパチニ小体の仕組み。似ていると思いませんか?
皆さんは万歩計や歩数計をご存知ですね。
万歩計は振動によって歩数をカウントする装置ですが、これが進化して、振動(動くこと)によって電力を発生させる装置が開発されました。それが、MEMS圧電デバイス=振動や圧力変化によって電力(電気)を発生させる装置=です。このデバイスを物体に取り付けると、物体が動く度に自動的に電気を発生するという最新の装置です。
開発者は「振動する物体は無尽蔵にあるので、将来のエネルギー供給源として、MEMS圧電デバイスの活躍が期待される」と語っています。(尚、万歩計には上下の振動によって電気スイッチが開閉して振動回数をカウントする振り子式と、運動による加速度変化が電圧の変化に変換されてカウントする圧電センサー式があります)
私は、このMEMS圧電デバイス(物体が動く度に電気を発生させる装置)を見て、
「この装置は、圧電神経の装置にとても良く似ている!」と思ったのですが、と同時に、
「現代の科学技術は、生命がもつ繊細で複雑なシステムを具現化している!」ことを感じ、
「人体は、現代の科学技術に匹敵する巧妙なシステムで運営されている!」ことを実感しました。
人の体は水で満たされ、その水分量は8〜9割と言われていますが、
体内の水分は純水ではなく、電気的な性質を持つイオン水です。体の各組織も同じく個性的な性質を持つイオン水に満たされています。
私たちは神経が電気的な性質を持つ組織であることは知っていますが、体がイオン水で満ちていることを考えると、神経に限らず、体全体が電気的な作用の影響下にあることが想像されます。
私たちの体に関する電気的な構図として、体のある組織が動くとき、そこではイオン水の変化が生じ、それは電気的変化として別の組織へ波及していくという形で、私たちの体の全体性が運営されているように、私は感じています
マイクロマシン圧電デバイス と パチニ小体(圧電神経)
その作用機序には相似点がみられる
7パチニ小体の [変形発信の仕組み] の問題点
私たちは、通常、大脳皮質を経由した運動=随意運動を行っています。
これに対し、呼吸泳動は不随意運動で、大脳皮質からのコントロール作用を受けない運動です。例えば、熱いものに手が触れると思わず手を引っ込める、石につまずいて転びそうになった時の咄嗟の足の動きなどは、脳幹反射や脊髄反射による運動と言われていますが、呼吸運動もそれらと同列のものと考えられます。
パチニ小体は 加圧によって変形する時に発信し、陰圧によって変形する時に発信します。
つまり「力を受けて変形する時に信号を発信する」という仕組みを持っています。
この仕組みは、臨床上、大切な問題を含んでいることに気づきます。
1変形せずに同じ形を保っている時は、信号を発信しない
パチニ小体のこの仕組は「変形せずに同じ形を保っているときは、信号を発信しない」という仕組みでもあることも意味しています。
「同じ形であり続けるときは、発信されない」という仕組みは、臨床上、どのような事が考えられるかを考えてみましょう。
2どのような場合に、パチニ小体は情報を発信しないか?
「変形せずに同じ形を保っているときは、信号を発信しない」という仕組みには、裏を返せば、動かないパチニ小体は、情報を発信できない仕組みと言えます。
すると、次のA、Bのような場合が想像されます。
A図は、周囲の組織に圧迫されて、動きがないパチニ小体のケースです。
例えば、膝の関節の間にあるパチニ小体は、膝の変形によって圧迫され動けない状況が現実としてあると推測されます。胸膜やその手に配置されているパチニ小体も同様に考えます。
この状況下では、パチニ小体は情報を発信することはなく、脳は情報を受け取ることはないでしょう。
B図は、パチニ小体の周囲の組織に動きがなく、パチニ小体が静止しているケースです。
例えば、関節運動が行われない部位にパチニ小体がある場合、ピンと張り詰めて動きがない膜組織の中にパチニ小体がある場合がそれに相当します。
周囲に動きがない状況にあるパチニ小体は、変形せずに静止しているので、情報を発信することはなく、脳は情報を受け取ることはないでしょう。
パチニ小体が信号を発信できない状況では、脳は情報を受け取ることが出来ず、そのため情報に対応するフィードバック機能や筋肉運動が作動しません。
その結果、パチニ小体の環境は固定されたままに留まるか、あるいはさらに動かない環境が進んでいく流れとなります。体に負のスパイラルをもたらしかねません。
ここで復習です。・・パチニ小体の配置部位は胸膜だけではないことを思いしましょう。
3 パチニ小体の発信不能と、体の不調や病気との関係
パチニ小体は、皮膚の下、胸膜、横隔膜、関節の周囲、骨膜、腱、筋膜にも配置され、それぞれでの圧変化にインパルスを発信しています。また、動脈の外膜や、動静脈の吻合部にパチニ小体が配置されていることに注目すると、パチニ小体は血流という微小な圧変化にも関与していることが推測されます。
言い換えれば、
パチニ小体は、各配置部位の動きの情報を、変形発信という仕掛けによって脳に伝えている圧電細胞と言えるでしょう。
パチニ小体が発信不能あるいは過小な発信状況にあるとき、何が推測されるでしょう。
あるいは、パチニ小体が発信が過小な状態にあるときは、どのような経過をみるでしょう。
例として、動脈の外膜に配置されたパチニ小体で考えてみると、
パチニ小体から発信がない状況は、その部位の動脈膜に動きがないことを意味します。動脈の流れが止まっているか、静止に近い状況にあることが想像されます。
また発信状況が過小であるときは、フィードバック機能も過小なため、動脈の流れは弱々しいものであることが想像されます。
体の不調や病気には、機能性(システム)の疾患と、器質性(臓器や固有組織)の疾患とが混在しています。パチニ小体の発信不能はその性質上、初期的には機能性の不具合や故障として現れますが、時間の経過とともに臓器の疾患へと進んでいく傾向があると考えられます。
4 発信不能のパチニ小体を賦活するアイディアと その臨床例
以下、編集中です
体の中心軸(体軸)を垂直に保つことの難しさ、大切さ
陸上に住む私たちは、動かずに二本の足で直立できることを、当然のことのように思っています。
少々の風が吹いても、びくともせずに立っていられます。
しかし水の中ではどうでしょう。頭を水面から出した状態で水の中で直立してみると、どことなく体の不安定さを感じます。水の流れが少々変化するだけで、体は揺らつくでしょう。この不安定漢は、体が水の浮力を受けるため、垂直方向に体の重心軸を保治続けることが難しいからです。
呼吸泳動の現象は、次のことを物語っています。
・水の中では、私たちの体はほんの僅かな呼吸量の変化によって、体の中心軸(体軸)が傾くこと。
・体軸の傾きを補正する筋力が働かない場合は、呼吸泳動に見られる現象が発生すること。
・呼吸泳動は、無意識領域で作動する復原力(体軸と重心軸の葛藤、直立状態に戻ろうとする力)によって現れる現象であること。
そしてこの現象は、逆に、
私たちの体は、体軸を垂直に保とうとする意識の力(筋力)が働くからこそ、直立していられる。
ことを物語っているでしょう。
呼吸泳動の謎を探る過程で、私の目に止まったのは「船の復原力」という言葉でした。
船は、船体の上半分は水の上、下半分は水の中にあります。船が海中に沈まず浮いていられるのは、船体が傾くと浮心の位置が移動し、それに伴い船を直立状態に戻そうとする力=復原力が働くからです。
私たちの体は、その7~80%が水中にあると、水の浮力を受けて体軸は不安定になります。その状況で肺に空気が多く入ると、浮心の位置が移動してさらに体軸は不安定になり、傾きやすくなります。「呼吸泳動」の初期の動きは、傾きを元に戻そうとする復原力の作用と見ることが出来るでしょう。また、体軸の傾きがさらに大きくなると、もはや復原力では間に合わず「乱泳動」となります。暴風雨にさらされた船の動きの如しです。
呼吸泳動という現象を力学的に説明するとならば、船の復原力は有力な説明になるでしょう。
呼吸運動とは、体の細胞に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するための運動と言われています。
しかし、それだけでしょうか?
呼吸泳動という現象を知ると「呼吸運動には別の機能がある」と思わざるを得ません。
それは、どのような機能でしょうか。